大阪・関西万博で来日した英ロックバンドBlurのアレックス・ジェームス。チーズ&スパークリングワイン造りにかける思いや進化する英国の食文化を熱く語る

Culture

2025.07.02

大阪・関西万博で来日した英ロックバンドBlurのアレックス・ジェームス。チーズ&スパークリングワイン造りにかける思いや進化する英国の食文化を熱く語る

シャンパンを2億円分飲んだ男が作るスパークリングワイン

──「Britpop(ブリットポップ)」というあなたのワインブランドについて教えてください。立ち上げの背景やきっかけは何でしたか?

私が農場に引っ越してから最初にしたことのひとつは、自分のロックンロールな時代について『bit of a blur the autobiography』という本を書くことでした。その本のプロモーションのときに、シャンパンに100万ポンド(約2億円)使ったと、ちょっと盛って話したのですが(笑)、もしかしたら結婚式を含めると、本当にそれくらい使っていたかもしれません。当時は無駄遣いだと思っていましたが、今思えば、研究していたわけです。気づけば私は、スパークリングワインについてかなり詳しくなっていました。

それで私たちがまずやったのは、リンゴの木を植えること。イギリスはリンゴの栽培にすごく適しています。農場でリンゴ酒造りを始めて、フェスでふるまったところ、みんながすごく気に入ってくれて。そこからスパークリングワイン造りという新たな分野に取り組めるようになったことは、とてもうれしかった。スパークリングワインは、お祝いや楽しい時間と結びついている飲み物です。私はいつか自分で造りたいとずっと思っていたので、今まさにやって来ている英国ワイン造りの“黄金時代”の流れの中にいられるのは、本当にワクワクします。

──近年、スティングやカイリー・ミノーグなど、多くのミュージシャンがワインブランドを立ち上げています。ブームについてどうお考えですか?

ワインを複雑だと感じる人も多いと思いますし、実際、何を選べばいいのかわかりづらい世界です。シャンパンがどのブドウから作られているかを知っていますか? 知らないですよね。だからこそ、メディアに登場するような信頼のある人たちが、ちょっとした道しるべになることはあると思うのです。たとえば、なぜ人はカイリー・ミノーグの「プロセッコ ロゼ」を買いたいと思うのか、私は多分買わないと思いますが(笑)、欲しい理由は理解できます。それを買えば、(こういう味だろうと)求めている通りのものが手に入るからです。だから、もし私の「ブリットポップ」を買ってもらえるなら、それはつまり、シャンパンを浴びるほど飲んで、広大な農場で暮らしながら、フェスという大規模なパーティーを毎年開いている男が作ったスパークリングワインが手に入る、ということですね(笑)。

──食の分野でも数々の賞を受賞されていますが、成功の秘訣(ひけつ)は何だと思いますか?

音楽の世界とは違って、ワインの世界ではBlur vs. Oasisのような“バンド対決”は起きません(笑)。チーズ業界もそうですが、みんながお互いを応援し合っています。ワインを造る人たちはただ、みんなが素晴らしいワインを造り、楽しむことを望んでいるのです。食べたり飲んだりすることにはとても陽気で、人と人の絆を深めるような何かよいものがあると思います。実は、まあまあのチーズを作るのも、まあまあの曲を書くのも、けっこう簡単です。でも本当に良いチーズを作るのは本当に難しくて、本当に良い曲を書くのも同じくらい難しい。何事もそうですが、本当に素晴らしいものを作るのは、極めて大変です。つまり何かを成功させたいなら、良いブランド、良いパートナーが必要で、ただブランド名を貼り付けただけみたいなことでは、うまくいきません。ただ本当に大切に思って努力すること、その情熱を持ち続けることが大事です。だから私も妻も一生懸命に取り組んでいるわけですが、一日中何かに打ち込むなら、音楽やチーズ、スパークリングワインをつくることほど素晴らしいことはないと思っています。

チーズとスパークリングワイン、そして音楽と

──音楽、チーズ、ワインといった異なる分野での活動が、どのように相互に影響し合っていますか?

音楽をやっていて、チーズを作っていて、なんだか変だという人もいますが、昔の修道士たちというのは朝、歌って、昼はチーズやスパークリングワインをつくっていたんです。すべては修道士たちが考案したもので、あらゆるフェスティバルももともとは宗教的な祭りだったことに気づきました。つまり私は実質、修道士みたいなものです(笑)。もちろん、Blurの再結成は素晴らしく、本当に魔法のような時間でした。でもずっとあの生活を続けていたら、今頃私はこの世にいないでしょうね(笑)。56歳になって、5人の子どもの父親である今の自分には、音楽作りよりも、ワイン造りのほうが合っているのかなと思います。それにたぶん私と同年代で、若い頃、Blurが好きだった人たちは、音楽を楽しむのと同じように、食べることも楽しむようになっていると思うんです。実際、チーズとスパークリングワインは本当に相性がよくて、それに音楽が加われば、すべてが調和してより一層楽しめますから。

──英国のフード&ドリンクで注目しているトレンドは? 

英国では今、素晴らしいブリティッシュ・チーズブームが起きていて、そしてスパークリングワイン・ブームがやってきています。「チーズ・エクスプロージョン(チーズ大爆発の意味)」の次は、「シャンペン・スーパーノヴァ(Blurのライバルバンドとして有名なOasisのヒット曲のタイトル)」です(笑)。イギリス産のスパークリングワインなんて、1990年頃まではほとんど存在しなかったのに、今では最高級のシャンパンやカヴァにも引けを取らないクオリティーになっています。実に驚くべきことで、イギリスの食文化が短期間でこれほど進化したことが信じられません。

──2017年ブリティッシュ・チーズ・アワード金賞、2019年ワールド・チーズ・アワード銀賞など、数々の賞を受賞しているあなたのチーズ「BLUE MONDAY(ブルーマンデー)」は日本人の口にも合いそうでしょうか?

「BLUE MONDAY」の根本的な味は日本になじみ深いもので、“うま味”が非常に強いブルーチーズです。(レコードのLP盤と同じ)12インチにしようと試みましたが、9インチのほうが美味しかった(笑)。残念ながら、今回は持ってくるのが難しかったのですが、日本へ届ける方法を考えているところです。万博には、お酒を持ってきました。チーズを日本の料理と合わせるのは難しいかもしれませんが、スパークリングワインは相性がいいと思います。非常に繊細で、しっかりとした酸味が、和牛から寿司まで幅広い料理と合いますので、ぜひ試してみてください。

photos: Tomoko Hagimoto text: Akiko Eguchi 

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Profile

Alex James アレックス・ジェームス

アレックス・ジェームスは、英国を代表するロックバンド「Blur」のベーシスト。食と飲料の愛好家でもあり、受賞歴のあるチーズ職人で、スパークリングワインなどの生産者としても本国で知られている。Instagram : @alexjamesshq

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