4月に開幕して以来、“国宝の万博”として連日開館前から行列となっている大阪市立美術館の特別展「日本国宝展」。後期展示のハイライト作品を紹介するとともに、美術館でのおすすめの過ごし方を内藤栄館長に伺った。

2025年の大阪・関西万博の開催と大阪市立美術館のリニューアルを記念して、135件(展示替えあり)全てが国宝という特別展。「国宝展が大阪で開催されるのは初めてのこと。大阪市立美術館は、1936年に日本で3番目の公立美術館として誕生しました。その大規模リニューアルを祝うにふさわしい作品がみなさまをお迎えしています。万博で世界中から多くの人が大阪を訪れる機会に、日本が誇る芸術をお披露目できるのは喜ばしいことです。教科書でしかみたことがなかった作品を実際に目の前で鑑賞できるのは、非常にロマンあふれる体験になると思います」と内藤館長は語る。
前期は、金印「漢委奴國王(かんのわのなのこくおう)」(展示終了)を目当てに訪れる人も多かったが、後期の入れ替え後の展示品にも見どころがある。後期の目玉作品が出そろった今こそ、まだ訪れていない人も、すでに鑑賞した方も足を運ぶ好機だ。
後期の目玉としては、琳派を大成させた尾形光琳作の「八橋蒔絵螺鈿硯箱(やつはしまきえらでんすずりばこ)」(江戸時代・18世紀 東京国立博物館蔵 展示期間:5月20日〜6月15日)。6月3日に登場したばかりの光琳代表作である「燕子花図屏風(かきつばたずびょうぶ)」(江戸時代・18世紀 東京・根津美術館蔵 展示期間:6月3日〜15日と合わせて、その意匠のモダンさに触れたい。
屏風でいえば、「唐獅子図屏風(からじしずびょうぶ)」(右隻 桃山時代・16世紀、左隻 江戸時代・17世紀 国 皇居三の丸尚蔵館収蔵 展示期間:5月20日〜6月15日)も見逃せない。ライオンをイメージして生まれた獅子を描いた大胆な構図に圧倒される。

そして、「土偶(縄文のビーナス)」(長野県茅野市米沢棚畑遺跡出土 展示期間:5月20日〜6月8日)も必見。雲母により煌めきをまとった、豊かな曲線のフォルムが特徴的で、当時の縄文の人たちにとってビーナスであったことが伝わってくる。割れていない状態で出土した希少な作品としても有名だ。

縄文作品では、通期展示の「火焔(かえん)型土器」(十日町市博物館保管 通期展示)も間近で見ると、存在感の特別さ、ユニークな造形にひきつけられる。岡本太郎をはじめ、多くの芸術家に影響を与えてきた作品であり、日本人のルーツを感じさせるものだ。

ひとつは、和歌山・熊野速玉大社の古神宝類「衵(あこめ) 萌黄小葵浮線綾丸文二重織(もえぎこあおいふせんりょうまるもんふたえおり)」(展示期間:5月27日〜6月15日)。明徳元年(1390年)に、熊野速玉大社の第一殿の社殿である結宮(むすびのみや)に祀(まつ)られている女性の神様・夫須美大神(ふすみのおおかみ)に奉納されたと考えられているもの。上着と肌着の間に着る装束で、文様が織られた生地に他の糸で二重に文様を浮き上がらせる「二重織」という高い技術で仕立てられている。

京都・神護寺からは「伝源頼朝像」(展示期間:6月3日〜15日)が出品されている。鎌倉時代に描かれた日本肖像画の傑作のひとつといわれている。源頼朝、平重盛、藤原光能の肖像画と伝えられる三幅を合わせて「神護寺三像」と呼ばれている。緻密(ちみつ)な写実表現を、実物でぜひ確認してほしい。


大阪・金剛寺の「日月四季山水図屏風」(展示期間:5月20日〜6月15日)も、じっくり鑑賞したい作品。6扇の屏風が2つで1組となる六曲一双の屏風で、やまと絵で四季の山水と日月が描かれている。密教の儀式で用いられたとされる屏風だ。1隻が縦1.5メートルほど、横3メートルほどの大型なので見応えも十分。

珍しいものとしては、「赤韋威鎧(あかがわおどしよろい)」(展示期間:5月20日〜6月15日)。平安後期に作られた大鎧で、平家物語の合戦絵巻などにも描かれており、当時流行していたと思われる。しかしながら、この作品以外に現存しているものはないとされている貴重なものだ。刀剣ファンには、垂涎(すいぜん)の作品ともいえるだろう。

中国伝来の「青磁鳳凰(ほうおう)耳花生 銘 万声」(展示期間:5月20日〜6月15日)も目に留めてほしい。中国の南宋時代に浙江省「竜泉窯」で焼かれたと考えられている透き通った青色が美しい磁器。筒の上部の左右に鳳凰をかたどった取っ手がついているので「鳳凰耳」と呼ばれている。このデザインの花生は何点か残っているが、国宝に指定されたのはこちら1点という。その違いをとくと見極めてみると面白いと思う。
「特別展はもちろん、ぜひリニューアルした内装にも注目していただけるとうれしい」と内藤館長。
国の登録有形文化財に指定されている大阪市立美術館は、外装を変更することはできないため、内装の大規模改修を行った。通常、リニューアルというと現代的な方向へ変わることがほとんどだが、大阪市立美術館は違った。
「昭和11年(1936年)に開業した当時の姿に戻したんです。中央ホールには、これまで昭和52〜53年(1977〜78年)に取り入れたシャンデリアが飾られていましたが、それを外したところオリジナルの天井が現れました。そうすると力強く、高い天井の姿が蘇(よみがえ)ったんです。ご来館の際に、ぜひ中央ホールの天井もチェックしてみてください」
新設されたカフェ「ENFUSE 大阪」が、Xなどで話題を呼んでいる。ケーキなどのメニューも評判だが、カフェの窓からの借景が好評だ。
「カフェからは隣にある、近代日本庭園の名園で知られる『慶沢園(けいたくえん)』が臨めます。窓越しに木立が見えて、これからの季節はとくに美しい。また、慶沢園から見る美術館の姿も、ひとつの芸術作品だと思います。建築だけなら、明治建築の至宝はたくさんあります。でも、庭とマッチングした建築美は他にはないものだと自負しております。美術館は、もともと住友家の邸宅があった場所に建てられており、庭園は住友家の庭でした。調和するように最初から計算されているんですね。日本の美しい美術館建築の3本指に入る名建築だと胸を張って言えます」
もうひとつ、一番力を入れたのは新しいガラスケースの導入だったという。
「透明度が高く、反射しないものを厳選しました。作品を最高の形でご覧いただけるように、照明も新しくしています。作品が語りかけてくるかのような臨場感を味わえるはずです」
最後に、内藤館長は今回の展覧会に込めた思いを話してくれた。 「万博のテーマは“いのち輝く未来社会のデザイン”です。『国宝』とは、先人が未来へ引き継ごうと考えて残ってきたもの。そういう意味で、万博と共通する精神が国宝には宿っていると思います。そうして守ってきた作品を通して、先人たちのメッセージを受け取ってもらえたら幸いです」
text: Rica Ogura
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特別展
大阪・関西万博開催記念 大阪市立美術館リニューアル記念特別展
日本国宝展
会期:〜2025年(令和7年)6月15日(日)
※館内混雑時は、入館制限を行う場合があります。
※会期中、一部展示替えがあります。
※災害などにより、中止・延期・変更となる場合があります。
土日祝は日時指定予約優先制です。
※平日の予約は不要です。
日時指定予約はこちら
開館時間:平日: 午前9時30分~午後6時30分(最終入館: 午後5時30分)
土日: 午前9時30分~午後7時30分(最終入館: 午後6時30分)
休館日:月曜日
※ただし、4月28日、5月5日は開館
観覧料:一 般 2,400円
高大生 1,700円
小中生 500円
※公式オンラインチケットや各プレイガイドでは、割引制度を適用したチケットは販売しておりません。
※未就学児、障がい者手帳などをお持ちの方(介護者1名を含む)は無料(要証明)。
ただし、土曜・日曜・祝日に入館する場合は日時指定予約をされたほうが待ち時間が少なくご入館いただけます。
※本展は、大阪市内在住の65歳以上の方も一般料金が必要です。
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