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本橋成一とロベール・ドアノー、あるいは中平卓馬と森山大道。2人展を通して、見慣れた写真が違って見えてくる様を恵比寿と葉山で堪能する

JR恵比寿駅から写真美術館に向かう動く歩道に掲示してあった写真展のビジュアル。左が本橋、右がドアノーの作品(撮影・高橋直彦)

”what to do”は、知的好奇心あふれる『マリ・クレール』フォロワーのためのインビテーション。今回は写真家による2人展について。東京都写真美術館で「本橋成一とロベール・ドアノー 交差する物語」展、そして神奈川県立近代美術館 葉山では「挑発関係=中平卓馬×森山大道」展が開かれている。交差と挑発――。いずれも2人の人間関係が軸となって、新しい物語が紡がれ、写真の見え方が変わってくるのが面白い。

写真は2人展と相性がいいようだ。東京都写真美術館では、これまでも「木村伊兵衛とアンリ・カルティエ=ブレッソン 東洋と西洋のまなざし」展(2009年)や「植田正治とジャック・アンリ・ラルティーグ 写真であそぶ」展(2013年)といった日仏を代表する写真家の2人展を開いてきた。今回はその第3弾。東京・東中野生まれの本橋(1940年~)と「フランスの国民的写真家」とされるドアノー(1912~94年)に焦点を当てた。本橋は敬愛するドアノーと面会するため1991年、パリへ向かったものの、飛行機の遅着で面会を果たせなかった。そのエピソードから展示は始まる。

世代や国も異なる写真家が紡ぐ「交差の物語」

本橋成一《羽幌炭砿 北海道 羽幌町》〈炭鉱〉より 1968 年 ©Motohashi Seiichi
ロベール・ドアノー《サン・ミシェル炭坑、ロレーヌ地方》 1960 年 ©Atelier Robert Doisneau / Contact

物理的な「交差」は果たせなかったものの、世代も国も異なる2人の写真には多くの共通点があり、文字通り「交差の物語」を紡いでいく。2人とも第2次世界大戦の混乱を経験し、そこでたくましく生きる庶民の姿を写真に収めてきた。ルポルタージュのテーマにも似たものが多い。例えば、炭鉱。本橋は1960年代後半に北海道や福岡の炭鉱を訪ねて、『炭鉱〈ヤマ〉』という写真集を68年にまとめ、太陽賞を受賞している。ドアノーも60年にフランスのロレーヌ地方やランスなどで炭鉱夫の日常に寄り添った写真を発表している。

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