話題作で好演し、近年ではアメリカのドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」にも出演するなど、 国際的にも活躍する俳優・二階堂ふみ。最新出演映画『わたしの知らない子どもたち』が10月16日に公開される。西川美和監督が、戦後の東京を生き抜く戦争孤児を描いた作品だ。企画のスタートは約6年前。丹念に書き上げられた脚本に、二階堂は強く心を動かされたという。 『わたしの知らない子どもたち』の主人公は、12歳の少女・琴子。戦争で家族を失い、生き延びるために少年として行動する。二階堂が演じたのは、戦前、琴子の担任教師だった曽根文美子だ。戦後の混乱期、喪失と貧しさに苦しみながら琴子の行方を追う。軍国主義教育に加担したことから、被害者でもあり加害者でもある立場に葛藤を抱える。西川監督が本作で描くのは、多くは語られてこなかった“名もなき”存在だ。
「語られてこなかったということは、声を上げられなかったり、声を奪われたりしてきたのだと思います。演じることで思いを寄せて、少しでも一緒に痛みを背負うことができたらと思いました」
自身は沖縄に生まれ、祖母が地上戦の激戦区だった糸満市で戦争を経験している。そのことを祖母は語りたがらなかった。
「私は母や祖母の妹からいろいろなことを聞きましたが、戦中や戦後の体験は祖母に大きな影響とトラウマを与えたと思います。戦時教育に疑問を持たなかったのかを尋ねた時には、一言、『そういう時代だったから』と。自分と同じように日常を過ごしていた人たちが戦争に巻き込まれていった。そのことへの思いが、この作品に参加する根底にあります。当事者の方々が背負った傷は計り知れない。思いを寄せ続けることが自分にできることなのかなと思っています」
戦後81年が経ち、当事者の体験を聞く機会も失われつつある。
「以前、広島平和記念資料館に被爆再現人形という蝋人形があって、撤去するか否かの議論があがった時代がありました。私はどちらかというと、恐怖心を煽っても、戦争の悲惨さを伝えるうえで必要な展示ではないかと思ったのです。一方、作りものではとても再現できないというお声もあったそうで、当事者の方々はそういう重荷を抱えているのだと気づきました。映画もそれに並ぶことだと思いますが、過去に対する問いを持ち続けることはできるし、当事者ではないから描けることもあるかもしれない。演じる中で生まれてくる感情は真実なのだという思いを持って、伝えていきたいと思います」
一見ミニマルながら、レイヤリングにより多面的な表情を演出するブラックドレスを纏って。色鮮やかなカラーブロックのストールが意外性のあるアクセントとなり、モダンさを引き立てる。 ドレス[ストール付き]¥1,210,000 ソックス ¥187,000 シューズ ¥308,000[すべて予定価格](すべてプラダ/プラダ クライアントサービス) 西川監督は広島県出身だ。若い頃は戦争の映画を作るとは思っていなかったと語る。
「広島、長崎、沖縄出身の作り手はしばしば求められると思いますが、以前はそれに反発に近い気持ちがありました。みんなが戦争体験者の子孫のはずなのに、なぜ局地的に、と。今回の作品を作り始めたのは、孤児たち一人ひとりがどんな人たちだったのか、調べたいと思ったことからでした。戦争を知らない世代が描くのは難しいとも感じたけれど、直に体験した世代の実感をわずかでも受け取ってきた私たちが『自分ごときが語るのはおこがましい』と思っていたら、若い人たちはどうやって自分の国の出来事を知るのだろう。だんだんそう思うようになり、覚悟が決まりました」(西川)
琴子を演じるのは小八重葵美。自身の希望で原爆ドームを訪ねるなど、学びを深めた。
「戦争について聞くと、怖いな、よくないな、と思っていました。でも、自分の国を守るためには戦うことも必要なのかな、と思っていたんです。今回、演じたり、いろいろと勉強したりする中で、たくさんの人がとても大変な目に遭っていることを知って、気持ちが変わりました。今も世界のどこかでつらい思いをしている人がいて、助けたいけど……」(小八重)
二階堂が映画デビューを果たしたのも、小八重と同年代。役と真摯に向き合う小八重の姿に刺激を受けた。
「きっと彼女たちが、私たちが上の世代から受け継いできたバトンを受け取ってくれたんじゃないかなと感じました。平和とは、個として言葉を持ち、生きられる状態だと私は考えています。子どもが子どもらしくいられて、安心して過ごせる。心にも体にも栄養が行きわたる子どもが一人でも多い世界になってほしいと思います」
戦争で家族と日常を奪われた12歳の少女・琴子(小八重葵美)は、少女であることが危険となった敗戦後の社会を生き延びるため、性別を隠し“少年”として生きることを選ぶ。音楽家の父(竹野内豊)との穏やかな暮らしから一転、自分自身を手放すという過酷な選択を迫られた。一方、かつて琴子の担任教師をしていた曽根文美子(二階堂ふみ)も、戦時中に加担した軍国主義教育と向き合いながら、敗戦後の社会を生きていた。加害と被害の間で揺れながら、それでも生きようとする二人。少女を棄てた琴子と、過去を背負う曽根の、生と再生の物語。VIDEO 『わたしの知らない子どもたち 』 10月16日(金)全国公開 出演:小八重葵美 二階堂ふみ 坂東龍汰 櫻井海音 北村有起哉 吉田羊 竹野内豊 岡田准一 田中裕子 役所広司 原案・脚本・監督:西川美和 製作・配給:K2 Pictures ©2026 K2 Pictures・AOI Pro.
お問い合わせ先 プラダ クライアントサービス tel: 0120-45-1913関連情報 【雑誌『marie claire』のPDFマガジンダウンロードページ】 ©︎marie claire/photo: Teruo Horikoshi〈TRON〉/ hair & make-up: Aiko Tokashiki / styling: Eri Takayama / interview & text: Saya Tsukahara / direction: Shiho Amano
Profile 二階堂ふみ
1994年9月21日生まれ、沖縄県出身。10代から俳優として活動し、映画『私の男』(2014)『リバーズ・エッジ』(2018)などで高い評価を得る。映画・ドラマの話題作に幅広く出演し、2020年にはNHK連続テレビ小説「エール」でヒロインを務めた。近年は「VIVANT」(2023、2026)「Eye Love You」(2024)などの話題作でも存在感を発揮。2024年には、米国のドラマシリーズ「SHOGUN 将軍」で「落葉の方」役を演じ、国内外で注目を集める。2026年は映画『開戦前夜』『わたしの知らない子どもたち』に出演。