「○○について教えて」──ひとこと尋ねれば、生成AIサービスが瞬時に答えをくれる時代。だからこそ、身の回りのあらゆるモノ・コト、とりわけ美の本質(レサンシエル)について、いま一度思いを巡らせたくなる。
まず大前提として、誰もがChatGPTやGemini のようなLLM(大規模言語モデル)を使う時代が突如としてやってきた。正直、メディアに携わるクリエイターにとっては脅威である。例えばキャッチコピーを考える作業においても、LLMは無難な正答を瞬時に、それも無限に出してくるから、「誰でもいい」「普通でいい」仕事はどんどん侵食されていっている。
だが、そこに「美しさ」や何らかのフック(引っかかり)が必要とされる作業に関してはどうだろう? そもそも「美しさ」とは? 少なくともいまの私には、LLMにそれが本当の意味で理解できているとは思えない。なぜなら、美しいモノやコトにまつわる表現と実感は非常にアナログ──いまだ人の身体を通してこそ立ち現れるものだと感じるからだ。
AIにとって、そのデジタルで対処しきれない余り物のような感情は、最適化という大義の下に均して消し去るべきノイズでしかない。リアルな肉体に備わる温度や湿度はもとより、愛や感動といった、人間が“受信”する有形無形のシグナル……そんな愛すべきバグを「字面」で概念的にしか“処理”できないAIは、今のところやはり道具の域を出ないのだ。
指で適量のアイシャドウをとる、まぶたにのばす──日々の何げない動作だが、これぞその人だけの「さじ加減」生身の人間が感覚的に判断する「さじ加減」というものを軽視してはいけない。例えば「あとちょっと」「ほんの気持ち」のような繊細な仕事。それは毎朝晩の肌が感じるスキンケアクリームのテクスチャーだったり、嗅覚の研ぎ澄ましを極めた調香のような作業だったり。その微妙な「心地よい揺らぎ」こそが、肝であり味わい。実際、人の顔も左右対称でないところに魅力が宿るように、数字にすると素直に割り切れない、どこか未完成な仕上がりに美しさ……いや、美しさ以上の「色気」を感じる事例は多々あるように思う。
とはいえAI(デジタル)と人間(アナログ)に、vs.(ヴァーサス)的な「どちらが良い・悪い」の対立構造を見るのはあまりに退屈。そもそも存在する次元が違うのだ。連載ではこのAI時代にも共存し続ける「未完成の色気」にスポットを当て、美の本質を皆さまとともに探っていきたい。
フレグランスのボトルには、スペック(香料)だけでなく、その香りだけの物語や哲学も詰まっている
column今月のBeauty Tips
「指でラフに」が生み出す色気
生っぽい仕上がりが美しい、クリームタイプのシングルアイシャドウ。左右非対称がデフォルトのまぶたに指でラフにのせることで、計算外のグラデーションが誕生。それこそがAIには描けない、十人十色の「未完成の色気」。

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手前から〉目もと美容クリームを兼ねたアイシャドウ。パール感抑えめの、肌なじみのよいブラウン。ナチュラルな陰影効果は、単色でもアイメイクの下地としても使いやすい。エトヴォス ミネラルアイバーム シャインアンバー ¥2,992(8月5日発売)。多色のパールがきらめく儚(はかな)げなラベンダーカラーは、アイメイクの仕上げとして上まぶたにさっと重ねることで、えもいわれぬ透明感を生み出す。エトヴォス ミネラルアイバーム シアーグレープ ¥2,992(8月5日に限定発売) ひと塗りで自然なグラデーションがかなうロングセラーが、明るさと立体感を引き出す「トーンコントロールパール」を新配合し、処方もパッケージも新しく。絶妙な血色カラーPK02は、くすみがちな大人のまぶたをいきいきと一気に華やかに。ケサランパサラン グロウアイカラー PK02 ¥3,300(8月3日発売)
photos & text: Aya Aso
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麻生 綾 AYA ASO
美容編集者/ビューティエッセイスト 東京育ち。メディアの美容記事、美容コラムを担当して37年目。『25ans』『婦人画報』(ハースト婦人画報社)『VOGUE JAPAN』(コンデナスト・ジャパン)『etRouge』(日経BP)各誌で副編集長、編集長も務めた。メイク、スキンケア、ヘアケア、香り、ヘルスケアetc.と全方位的に詳しいオールラウンダー。趣味は(も)美容、美味しいもの探し、鬱(うつ)アニメ観賞、馬骨。服もかなり好き。