きれいをつくる女性たち 「ネロリラ」仁科智子

Beauty

2026.05.29

きれいをつくる女性たち 「ネロリラ」仁科智子

コスメティックの世界にも「顔が見えるものづくり」が広がりつつある。原料や産地とのつながりへのこだわりは、「美しさとは自然と人の関係そのもの」という価値観の表れであり、地域の新たな活路ともなりうる。それを体現するブランドのつくり手をたずね、肌に届くまでのストーリーを聞いたインタビュー連載。第6回はジャパニーズネロリを核に植物本来の香りとエネルギーを感じられるスキンケアを展開する『ネロリラ』。商品開発を担う仁科智子に、守り続けていることを教わった。

Index

プロダクトの核となる素材は自分たちで採取する

新潟市・佐潟のほとりで営むオーガニックハーブ園のラベンダーを使用

生産者と愛用者ともに顔の見える付き合いを目指して


プロダクトの核となる素材は自分たちで採取する

なめらかなのに、どこかコクがある手触り。肌にのばすと、花の気配がふわりと立ち上がる。顔とカラダに潤いをもたらす「フラワークリーム」は、“パワーオーガニック ”を追求する『ネロリラ』の新たな挑戦でもある。

──花のエネルギーをまとわせたボディークリームというのは、どういうものでしょう?
植物の成分だけでなく、花のエネルギーを写しとったフラワーエッセンスも取り入れたスキンケア製品です。オーストラリアの先住民・アボリジニは心身の不調を感じた時に、花びらについた朝露を飲んでととのえていたそうです。この民間療法は1930年代に英国の医師によって体系化され、広まっていきました。

──スキンケア製品にフラワーエッセンスを組み込んだのは、なぜですか?
大人になると仕事と家事をこなすバイタリティーが必要ですよね。日々を送る中で肌のケアと同時に、活力も補給できるプロダクトがあればいいと思い、花のパワーでバランスをとるフラワーエッセンスに着目しました。ラベンダーは自分らしさを取り戻すサポートをしてくれて、『ネロリラ』を象徴するジャパニーズネロリには、幸福感を与えてくれると知りました。さらには植物が育つ大地が持つエネルギーも重要なため、花が咲く時に畑を訪れてエッセンスの抽出に挑戦することにしました。

新潟市・佐潟のほとりで営むオーガニックハーブ園のラベンダーを使用

──どんな方法で?
湧水を張ったガラスボウルに朝一番で摘み取った花を入れて、日光に3〜4時間ほど当てるやり方です。花のエネルギーが水に移るにつれ、表面にぷくぷくと気泡が出てくる光景はとても神秘的でした。私たちが採用した「太陽法」は、快晴の朝の日差しをたっぷり浴びた満開の花を摘む必要があります。ラベンダーとジャパニーズネロリともに採取できたのは、幸運でした。

ハーブ園の一角でフラワーエッセンスを抽出

──時期が違っていたのですか?
はい。季節も土地も異なります。ラベンダーは7月の新潟で、ジャパニーズネロリは5月に佐賀県唐津市で採ったものです。ちなみに後者は前身の『ネロリラ ボタニカ』時代から花の採取に行っていた場所でもあります。

生産者と愛用者ともに顔の見える付き合いを目指して

──10年近くも収穫を続けているそうですね。そのきっかけは?
ブランド名に冠したネロリを探していた時に、みかんの耕作放棄地の管理法を模索している佐賀県唐津市の人たちと出会いました。栽培をやめても木を伐採するわけではなく、放っておいても実はなります。それを目当てに山から降りてきた野生動物が、休耕地だけでなく圃場のみかんも食べてしまうようになり、対策を練っていたそうです。収穫をしない畑の花を摘めば果実が成熟しないため、その被害から農作物を守れる。その花が欲しい私たちは手を挙げました。そこから官民学一体となって地域と一緒に未利用農地の活用に取り組んでいます。

──そうすると足を運ぶ畑は毎年変わるのですか?
唐津市内を点々としています。最近では温州みかん育成のために摘花が必要な苗木からも採取しています。ジャパニーズネロリと名付けた花は、毎年5月上旬の5日ほどしか咲きません。『ネロリラ』のスタッフだけでは摘みきれないので、市役所の職員や地元の高校生にも協力いただいて70〜100kgほどを収穫します。いまでは町ぐるみでGWの恒例行事となりました。ブランドにとっては新しい一年の幕開けでもあり、個人的にはみずみずしい柑橘(かんきつ)花の香りが漂う畑で過ごすのは充電にもなります。

苗木の畑の摘花作業は農家と連携して行う

──原料調達のアクションが地域の活性へとつながったのですね。
耕作放棄地の手入れがきっかけで活路を見いだし、就農するケースもあります。コスメを通じて、町の発展に少しでも寄与できたのはうれしいですね。

──直近の収穫ではフラワーエッセンスにも挑戦されました。
はい。一昨年までは蒸留用に蕾(つぼみ)だけを摘んでいました。今回、初めて満開のものを摘みましたが、花が持つエネルギーの強さに驚きました。同時にパワーのある製品になる確信も得ました。

満開の花が水に漬かった光景は幻想的だ

──奈良県で1200年前の手法で茶葉や、淡路島でカレンデュラ(キンセンカ)を栽培する人など、自身のポリシーを貫く生産者と手を組んでいます。
心身をととのえるには生命力にあふれた植物が不可欠です。信念に共鳴した方の畑にはパワーもあふれています。

──2025年に行ったリブランディングにあたって大事にされたことは?
根幹を守るという点です。前身となるブランドの開発には、メイクアップアーティストの早坂香須子さんが深く関わっております。植物療法の知識と、美の土台となる肌づくりのメソッドを融合させて最初に打ち出したのが、化粧水、2層オイル、クレイマスクの3種でした。これらは芳香療法の視点も織り交ぜているため、いずれも香りが異なります。この個性と肌になじむ質感はそのまま受け継いでいます。もちろん、天然由来100%処方というのも。

──ボディケアシリーズでは復刻させた一品もあるそうですね。
はい。愛用いただいていた方からのラブコールを受けて、再販しました。満月の日にホホバオイルにカレンデュラとアルケミラモリス、ローズクォーツとダイヤモンドを漬け込んだ「ボディ オイル ル ・エロス」です。エキスではなく、植物の漬け込みオイル100%でできたものです。

──ハーブの成分がぎゅっと詰まっていますね。
精油の香りも特徴で、ウィンターセイボリーのスパイシーさの中にイランイランの甘さも感じる。塗るたびに呼吸が深くなり、緊張がほどけていきます。

──これまで積み重ねてきたものは大切にしつつ、新しい道も進んでいます。今後の展望は?
店頭でものづくりのストーリーを伝えたいです。現在の販売ルートはECが中心なのですが、リブランディングをきっかけにポップアップに力を入れています。新宿で行った際には山口から駆けつけてくださった方もいて。交流できる空間があるのはやっぱりいいなと思いました。今後はさらに各地で開いていきたいです。

ネロリラ
2016年に『シンシア・ガーデン』などを運営する化粧品企画会社の『ビーバイ・イー』から、「ネロリラ ボタニカ」としてデビュー。2025年にサザビーリーグ傘下の『ICL』へ移り、同年9月にリブランディングを果たす。マザーアースの恵みを大切に、植物本来の香りとエネルギーを感じられるものづくりはそのままに、ブランド名を「ネロリラ」に変更。新たに公式ECを立ち上げ、POP UPストアを中心に展開する。

photo: Tomoko Hagimoto text: Mako Matsuoka


NEROLILA 
https://nerolila.com/shop/default.aspx

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